タグ一覧

証券モニタリング概要・事例集の活用

2023.11.01

1.今回のテーマ

みなさん、こんにちは弁護士のスガオです。

 

今回のブログ記事では、「証券モニタリング概要・事例集」について紹介します。これは証券検査の事例を知る上で極めて重要な資料であり、証券取引等監視委員会が毎年公表している資料です。

 

なお、私は、弁護士資格を有する任期付き公務員として、財務省関東財務局の証券取引等監視官部門で証券検査官を務めていました。そこでの仕事は、金融商品取引業者等に対する証券検査を行い、ひいては市場の公正性と透明性を保つことでした。

 

 

 

2.「証券モニタリング概要・事例集」とは

証券取引等監視委員会は、2017(平成29)年11月以降、毎年、金融商品取引業者等に対する証券モニタリングを通じて把握した問題点等をこの「証券モニタリング概要・事例集」にまとめ、公表しています。この報告書には、最近の事務年度中に検査が終了した業者のうち、勧告を行った事例及び指摘を行った主な事例の概要が掲載されています。

 

リンク:証券取引等監視委員会 証券モニタリング概要・事例集

 

 

なお、「事務年度」とは証券検査の年度のことで、2016(平成 28) 年度より、証券検査事務年度を7月から翌年6月末と定めています。つまり、例えば、令和4年事務年度とは、2022(令和4)年7月から2023(令和5)年6月末までの期間のことを指します。

 

 

 

3.「証券モニタリング概要・事例集」の活用方法

証券モニタリング概要・事例集を読むことで、証券検査で問題になった同業他社における事例を知ることができます。

そのため、証券モニタリング概要・事例集は、金融商品取引業者等にとって、より良い内部管理体制の構築や事業運営を向上させるための貴重な参考資料となります。

 

また、証券モニタリング概要・事例集には、証券取引等監視委員会からの金融商品取引業者等へのメッセージも込められていると感じています。

例えば、令和4年事務年度である2022(令和4)年8月に公表された証券モニタリング概要・事例集の「監視委」コラムでは、「適合性の原則の明確化」が取り上げられました。そこでは、「一部の金商業者等においては、依然として、顧客意向を軽視した勧誘や経済合理性の観点から不適切な乗換勧誘など、営業姿勢に問題のある事例が見受けられます」という指摘があり、さらに「証券監視委では、引き続き、顧客の知識・経験・財産の状況・投資目的など、顧客属性等に則した適正な投資勧誘の履行を確保するための態勢整備の状況等について、モニタリングしていきたいと考えています」と述べられています。

そして、実際に同事務年度である2023(令和)5年6月9日付けで証券取引等監視委員会は「適合性原則に抵触する業務運営の状況」を理由として、ちばぎん証券株式会社に対して勧告を行いました。

 

リンク:証券取引等監視委員会 ちばぎん証券株式会社に対する検査結果に基づく勧告について

 

 

以上からも明らかなように、証券取引等監視委員会が毎年公表している「証券モニタリング概要・事例集」は、証券検査で問題となった事例を知るうえで、また証券取引等監視委員会からのメッセージを把握するうえで非常に有益な資料です。ですから、金融商品取引業者等の皆さまにおかれましては、この資料を是非とも有効に活用していただきたいと思います。それが最終的には、金融業界全体の健全な成長と市場の信頼性向上につながることでしょう。

 

以上、「証券モニタリング概要・事例集の活用」について解説しました。